
馬刺し
部位解説
九州うまいもんと焼酎 芋蔵|2025年7月|読了時間:約9分
熊本産馬刺しを知り尽くす
「馬刺しって赤身しか頼んだことがない……ほかに何があるの?」
実は、馬刺しの世界は部位によって味・食感・食べ方がまったく異なる、奥深い料理です。
たてがみ・ふたえご・霜降り・レバー——部位の名前とその特徴を知るだけで、一皿の楽しみ方が何倍にも広がります。赤身だけ食べていた方が「こんなに違うのか」と驚く体験が、馬刺しにはあります。
九州うまいもんと焼酎の専門店「芋蔵」では、馬刺しを複数部位でご提供しています。この記事では、馬刺しの歴史・部位の特徴・通の食べ方から焼酎とのペアリングまで、芋蔵スタッフの視点で徹底解説します。
Introduction
馬刺しとは——九州・熊本が誇る生食文化の歴史
馬刺しとは、馬の肉を薄く切って生で食べる日本料理です。全国各地にある料理ですが、熊本県が最大の産地・消費地として知られており、「馬刺し=熊本」というイメージが定着しています。
熊本に馬刺し文化が根付いた理由
熊本の馬肉食文化については諸説ありますが、最も有力とされているのが戦国武将・加藤清正の説です。朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の際に食糧難で軍馬を食べたことがきっかけとなり、帰国後も馬肉食の習慣が熊本に広まったとされています。
また、熊本は古くから農耕馬の産地として馬の飼育が盛んでした。農耕馬として働いた馬を食肉として活用する文化が生まれ、それが時代を経て洗練された食文化として発展していきました。現在、熊本県は馬肉の生産量・消費量ともに全国一位を誇り、市内には馬刺し専門店が数多く存在します。
馬肉が生食できる理由——安全性の根拠
「なぜ馬の肉は生で食べられるの?」という疑問をよく受けます。理由は主に2つあります。
- ✓馬の体温が高い——馬の体温は38〜39℃と人間より高く、食中毒の原因となる一般的な菌が繁殖しにくい環境になっています
- ✓法定の冷凍処理——厚生労働省の基準により、生食用馬肉は-20℃以下で48時間以上の冷凍処理が義務付けられており、寄生虫(住肉胞子虫)のリスクを排除しています
なお、2012年に牛レバーの生食が禁止されて以来、生で食べられるレバーは馬のレバーのみとなっています。馬レバーは適切な処理が施された専門店でのみ提供されており、臭みが少なくクリーミーな食感が特徴です。
Section 01
馬刺しの部位を知る——定番から希少部位まで完全ガイド
馬刺しの醍醐味は、部位によって驚くほど異なる食感と味わいにあります。メニューを見て「何を頼めばいい?」と迷ったことのある方のために、主要部位の特徴をまとめました。
馬刺し 部位別 特徴一覧
| 部位 | 食感 | 味わい | 希少度 | こんな方に |
|---|---|---|---|---|
| 赤身定番 | しっとり、なめらか | 濃厚な旨み。鉄分豊富でコク深い | ★☆☆ 定番 | 馬刺し初心者・王道を楽しみたい方 |
| 霜降り | とろけるような柔らかさ | サシの甘みと赤身の旨みが融合 | ★★☆ やや希少 | 贅沢な甘みを楽しみたい方・接待に |
| たてがみ馬固有 | コリコリ、ゼラチン質 | 脂なのにあっさり。独特の甘みと旨み | ★★☆ やや希少 | 通の方・食感を楽しみたい方 |
| ふたえご馬固有 | コリコリ、弾力がある | 赤身と脂の層から広がる甘みと旨み | ★★★ 希少 | 上級者・食感と甘みを両方楽しみたい方 |
| レバー | ブリブリ、クリーミー | 濃厚でコク深い。臭みが少ない | ★★★ 希少 | レバー好き・珍味を楽しみたい方 |
| ハツ | サクサク、歯切れが良い | 淡白でアッサリ。後味がきれい | ★★★ 希少 | あっさりした部位を探している方 |
赤身——馬刺しの王道。鉄分豊富でヘルシーな定番
馬刺しの代名詞ともいえる部位です。モモやロースなど上半身・下半身の赤身部位がまとめて「赤身」として提供されることが多く、しっとりとなめらかな食感と、噛むほどに広がる濃厚な旨みが特徴です。鉄分・タンパク質が豊富でカロリーが低く、ヘルシーな食材としても注目されています。まず馬刺しを食べるなら、ここから始めるのが定番です。

霜降り——サシの甘みと赤身の旨みが融合した高級部位
馬のバラ系の部位に入るサシ(脂の差し込み)が、口の中でとろけるような甘みを生みます。赤身の旨みと脂の甘みが一体化した、贅沢な味わいが特徴で、和牛の霜降りとはまた異なるあっさりとした後味があります。特別な日のご馳走として、または接待のシーンに最適な部位です。
たてがみ(コーネ)——馬にしかない真っ白な脂身。コリコリ食感と独特の甘み
たてがみは馬の首の付け根にある皮下脂肪で、馬にしかない固有の部位です(熊本では「コーネ」とも呼ばれます)。見た目は真っ白で、脂身でありながらコリコリとした独特の食感と、くどくない甘みが特徴。脂なのに口の中でさっと溶ける不思議な感覚で、初めて食べた方のほとんどが驚きます。
たてがみ単体でも食べられますが、赤身の上にたてがみを乗せて一緒に食べると、赤身の旨みにたてがみの甘みが加わって味わいが一気に深まります。これが通の楽しみ方です。
ふたえご——赤身と脂が3層になった希少部位。コリコリとした独特の食感
ふたえごは馬のあばら(バラ)周辺にある3層構造の部位で、赤身・脂・赤身が層をなした断面が特徴的です。1頭からわずかしか取れない希少部位で、コリコリとした弾力ある食感と、噛むほどに滲み出る甘みと旨みが同時に楽しめます。たてがみと似ていますが、ふたえごは赤身の旨みもあるため、より複雑な味わいです。
レバー——今や日本で唯一生食できる肝臓。クリーミーで臭みがない
2012年に牛レバーの生食が禁止されて以来、生で食べられるレバーは馬のレバーのみとなりました。馬レバーは適切な衛生基準(-20℃・48時間以上の冷凍処理)のもとで提供されており、ブリブリとしたクリーミーな食感と、クセのない濃厚な旨みが楽しめます。ごま油と塩で食べる熊本流が最もおいしい食べ方とされています。
ハツ(心臓)——サクサクとした歯切れが心地よい淡白な希少部位
馬の心臓部位。サクサクとした軽やかな歯切れと、淡白でアッサリした後味が特徴です。レバーと比べると個性が控えめで、ほかの部位と食べ比べたときにそのさっぱりさが際立ちます。取扱いのある店が限られる希少部位で、見かけたら積極的に試してみてください。
Section 02
馬刺しを最高においしく食べる——タレ・薬味・食べる順番の流儀
部位の知識と同じくらい大切なのが、タレと薬味の使い方です。部位ごとに最適な薬味の組み合わせがあり、これを知ると馬刺しの楽しみ方がさらに広がります。
定番タレ——熊本流は甘口醤油+にんにく+生姜
馬刺しのタレは、甘口醤油(または馬刺し専用醤油)にすりおろしにんにくと生姜を添えた熊本スタイルが最もポピュラーです。熊本では独特の甘みのある醤油が使われており、これが馬刺しのタレとして最もよく合います。通常の濃口醤油では馬刺しの繊細な甘みを打ち消してしまうことがあるため、甘口醤油が推奨されます。
部位別の薬味使い分け——組み合わせで旨みが変わる
| 部位 | おすすめ薬味 | 理由 |
|---|---|---|
| 赤身・霜降り | にんにく+生姜 | 旨みを引き出し、後味をすっきりさせる |
| たてがみ | 生姜のみ | にんにくを加えるとたてがみの繊細な甘みが消えやすい |
| ふたえご | ごま油+塩 または 生姜 | 層の甘みとごま油が共鳴。醤油なしでも十分においしい |
| レバー | ごま油+塩(熊本流) | 醤油より塩でレバーのクリーミーさを際立たせる |
| ハツ | にんにく+醤油 | 淡白な味わいに旨みを補完。にんにくが食感と合う |
食べる順番——淡白な部位から始め、濃厚な部位で締める
盛り合わせを頼んだときは、食べる順番も意識するとより楽しめます。味覚は最初に食べたものに引きずられる性質があるため、淡白な部位から始めて徐々に濃厚な部位へ進むのがおすすめです。
- 1.ハツからスタート——もっとも淡白。口を慣らす
- 2.赤身——王道の旨みを堪能
- 3.たてがみ・ふたえご——独特の食感と甘みを楽しむ
- 4.霜降り——サシの甘みで贅沢な中盤へ
- 5.レバー——濃厚なコクで締める
TIPS
通の食べ方——たてがみを赤身に巻いて食べると旨みが倍増する
馬刺し通の間で知られている食べ方が「たてがみを赤身の上に乗せて一緒に食べる」スタイルです。
たてがみのコリコリとした食感と甘みが、赤身の旨みと合わさることで、どちらか単体で食べるよりも複雑で豊かな味わいになります。にんにく醤油を少しつけて一緒に口に運ぶと、これが本当においしい。
芋蔵では盛り合わせで注文された際に「たてがみと赤身を一緒に食べてみてください」とお伝えすることがよくあります。初めて試した方のほとんどが「これは反則だ」とおっしゃいます。
Section 03
馬刺し×焼酎——部位別の最強ペアリングガイド
馬刺しと焼酎の組み合わせは、九州の食文化が生み出した最高のペアリングのひとつです。部位によって脂の量・旨みの強さが異なるため、合わせる焼酎も変えることで体験の質が一段上がります。
部位 × 焼酎 最強ペアリング表
| 部位 | おすすめ焼酎タイプ | 飲み方 | 芋蔵おすすめ銘柄 |
|---|---|---|---|
| 赤身 | 白麹・常圧蒸留 | お湯割り | 森伊蔵 |
| 霜降り | プレミアム銘柄・黄麹 | ロック | 魔王 |
| たてがみ | 白麹・減圧蒸留 | ソーダ割・水割り | 海 |
| ふたえご | 白麹・黒麹どちらも | 水割り | 三和鶴白・黒伊佐錦 |
| レバー | 黒麹・常圧蒸留 | 水割り・お湯割り | 村尾・黒伊佐錦 |
Section 04
産地と品質の正しい見極め方
「なぜ馬刺しといえば熊本なのか」——この問いに答えることが、良い馬刺しを選ぶ基準の理解にもつながります。
熊本が馬刺しの聖地である3つの理由
- 01
馬の生産・飼育頭数が全国一——熊本は南九州の豊かな牧草地を持ち、馬の飼育環境に恵まれています。穀物を食べてじっくり育てる「穀物肥育」が行われ、身が締まって旨みの強い馬肉になります - 02
消費量・専門店数も全国一——熊本市内には馬刺し専門の飲食店・精肉店が数多く、市民の日常食として親しまれています。需要と供給が高い水準で循環しているため、新鮮な馬刺しが常に手に入ります - 03
400年以上の食文化の蓄積——加藤清正の時代から続く食文化は、屠畜・処理・保存の技術を高い水準に育てました。熊本産馬刺しの品質の高さは、この長年の技術的蓄積によるものです
いい馬刺しを見極める3つのポイント
- ✓色——鮮やかな深紅色が新鮮な証。褐色がかっているものは鮮度が落ちている可能性あり
- ✓臭み——良質な馬刺しにはほとんど臭みがない。独特のにおいが強いものは鮮度管理に問題がある可能性
まとめ
馬刺しは「部位を知ってから食べると10倍おいしくなる」料理
この記事でお伝えしたことを改めて整理します。
- ✓部位によって味・食感が全く異なる——赤身・霜降り・たてがみ・ふたえご・レバー・ハツ、それぞれに個性がある
- ✓薬味は部位ごとに使い分ける——赤身はにんにく醤油、たてがみは生姜のみ、レバーはごま油塩が熊本流
- ✓通の食べ方——たてがみを赤身に巻いて食べると旨みが倍増。食べる順番は淡白→濃厚が基本
- ✓焼酎との相性が最高——部位に合わせて焼酎タイプと飲み方を変えると体験が一段上がる
「馬刺し=赤身」だと思っていた方が、たてがみやふたえごを食べて驚く——そんな体験が馬刺しにはあります。知識と体験の両方があって初めて「馬刺しがわかった」と感じられます。
芋蔵では、馬刺しを100種以上の焼酎とともにお楽しみいただけます。部位の選び方・食べ方・焼酎との合わせ方——何でもスタッフにお気軽にお声がけください。
馬刺しと100種以上の焼酎を東京で
たてがみ・ふたえご・レバーなど複数部位の馬刺しと九州料理。
九州うまいもんと焼酎 芋蔵でお待ちしています。
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